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名古屋地方裁判所 昭和59年(行ウ)12号 判決

愛知県名古屋市緑区有松町大字有松字橋東南七六番地

原告

森井明

東京都千代田区霞が関三丁目一番一号

被告

国税不服審判所長

林信一

右指定代理人

荻野志貴雄

西尾清

佐野貢

大西昇一郎

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一  原告は、「被告が、原告に対し、昭和五九年七月三一日付でした裁決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、別紙(一)記載のとおり請求の原因を述べ、証拠として甲第一ないし第四号証を提出した。

被告は、主文同旨の判決を求め、別紙(二)記載のとおり主張し、甲第一ないし第四号証の成立は認め、第四号証は不知と述べた。

二  よって、検討するに、原告の主張は、要するに、「原告は、昭和五七年分の所得税につき、原告が昭和五七年三月一二日に原告所有の豊田市田中町四丁目九番四所在の宅地(五三二・八八平方メートル、以下、「本件土地」という。)を譲渡したことによる所得の算定上、右土地の譲渡が租税特別措置法三一条所定の長期譲渡所得の課税の特例が適用されるべきものであるのに、これを適用しないで確定申告をしたので、昭和五八年六月六日、本件土地の譲渡による所得が右特例の適用されるものであるとして、熱田税務署長に対し、更正の請求をしたが、右税務署長は、同年九月九日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下、「本件原処分」という。)をし、原告はこれを不服として被告に対し、審査請求をしたが、被告は昭和五九年七月三一日付でこれを棄却する裁決(以下、「本件裁決」という。)をした。しかるに、本件裁決は、本件土地の譲渡所得の算定につき、前記長期譲渡所得の課税の特例の適用がないとして原告の更正の請求を理由がないとした本件原処分を維持したものであるから違法であり、取り消されるべきである。」というものと解せられる。

しかしながら、行政事件訴訟法一〇条二項によれば、裁決取消しの訴えにおいては、原処分の違法をその違法事由として主張することは許されないこととされているところ、原告が本件裁決の違法事由として主張しているのは、専ら、本件原処分の違法事由であって、本件裁決固有の瑕疵を主張するものでないことは、原告の右主張に照らし明らかである。

したがって、原告の右主張は、本件裁決の取消しを求める本訴において主張する違法事由としては、主張自体失当というべきである。

三  よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加藤義則 裁判官 高橋利文 裁判官 綿引穣)

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